社会人博士を取る流れ

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大学や研究科によってプロセスは違うと思うが、自分の通った大学の課程博士を例に書いていく。

基礎知識

修士と学士は大学に論文を提出するだけで良いが、博士課程は自分が第一著者となっている対外論文が必要であることが多い(論文が無くても特許があれば取れる大学もあるらしい…)。 自分のいた大学では下記のいずれかが最低条件だった。 一つめの条件を満たしている方が望ましい。 ただし、入学前の業績だけで修了するのはダメ。

自分は、日本語のジャーナル2報+国際会議2報。

入学まで

まず、職場の上長から博士課程に行くことの許可を取る。 許可は景気にも左右されやすいので、後で取ろうなどとは考えない方が良い。 自分の場合は社会人博士で学位を取った上長より勧められて学位を取りにいくことを決めた。 上長曰く、絶対取ってやるという気がないと取れない。

次に、入りたい研究室の先生の事前承諾をもらう。 博士課程の学生を取る資格を持っていない先生もいるので、博士の学生を持っていない先生には聞いた方がよい。 自分の場合は修士を出るときに指導教官から博士課程を勧められていたのでそれにのっかった。 2年以上の社会人経験があると社会人入試を利用することができた。 ちょうど2年間の社会人経験だったので、社会人入試枠を使い、研究計画をプレゼンで発表することになった。

入試のことは良く覚えていないが、自分のノートPCにプレゼンを入れて持っていき、15分くらいの発表と5分くらいの質疑応答をしたと思う。 きっちりとした研究計画ではなくても、これといって問題はない。

入学式は行っていないので分からない。 後で事務から必要な書類をもらった。 修士と同じ大学だったからか、修士で余った単位を利用し、授業を受ける必要がなかった。 このような諸々の申請書を記述し、提出する。

予備審査まで

修士課程と大体同じだが、ジャーナルや国際会議に出して修了要件を満たすようにする。 それから、学内にのみ張り出された情報の入手や書類の提出のため、学生と仲良くしておくと良い。

D2からは中間発表がある。 この内容がまともで、前述の修了要件を満たす見込みもあるようなら、指導教官から予備審査へのゴーサインが出るようだ。 中間発表は、発表時間約15分、質疑応答約10分。 A4一枚のレジュメを用意し、事前に提出する必要がある。 これを通過すると指導教官により学位論文審査委員会が召集され、副査の先生が確定する。

学位審査

殆どの大学院で学位審査(本審査)の前に予備審査が行われる。 基本的に予備審査が通れば本審査に通ることから、本審査のことをセレモニーと言う人もいる。 このようなシステムを採っているのは、本審査で落ちると再度そのテーマで学位審査請求できないという内部ルールになっているため、予備審査で落とすことによって再挑戦可能にするためだそうだ。

D論は自分の複数の原著論文を一貫した主張の下にまとめたものである。 予備審査までの間、一貫した主張を導き出すということに苦労することになる。 この一貫した主張が論文の Philosophy であり、これができて初めて Ph.D. を与えてよいと考えるそうだ。

修了までのスケジュールは専攻事務に聞くと教えてくれる。

予備審査

予備審査の日程調整は指導教官が行う。 予備審査の前に学位論文の予稿(D論)を印刷し、審査委員会の先生方に配布する。 中にはpdfを希望する先生もいるので、その方には別途配布する。 その後、プレゼンによる発表を行う。 発表時間は約1時間、質疑応答は約15分。 発表当日はプレゼンのスライドを印刷したものを配布する。 発表後、副査の先生方からそれぞれ最低一つの質疑がある。 ここで指摘された内容は本審査までに修正する必要があるので、メモを取るか録音するとよい。 質疑応答も終わると、発表者は部屋から退出を命じられ、審査委員で合否の話し合いが行われる。 正式な合否はその後行われる専攻会議で決定し、指導教官より結果を伝えられる。

本審査まで2ヶ月強あり、その間D論とプレゼンを直す。 D論の修正箇所は、論文の査読の応答と同様で、指摘内容と変更箇所・変更内容の対を示すと良い。 もし、大幅な内容変更があるなら論文の概要も記述すると良いだろう。

本審査+公聴会

基本的に予備審査と同じで、事前のD論の配布とプレゼンによる発表を行う。 発表時間も予備審査とほぼ同じである。 発表当日はプレゼンのスライドを印刷したものを配布する。 プレゼンは、予備審査との違いを強調しながら進めるとよい。 やはり副査の先生方からそれぞれ最低一つの質疑がある。 質疑応答が終わると、発表者は部屋から退出を命じられ、審査委員で合否の話し合いが行われる。 正式な合否は、その後の専攻会議、教授会を経るため一ヶ月程度かかる。 ここでの質疑応答の結果を踏まえて製本までの一ヶ月強の間、D論を修正できる。

修了まで

製本

学位授与式までに上製本したD論を用意する。 製本の形式は大学より連絡があるので、それに合わせる。 用意する数は最低でも大学図書館用、国会図書館用、審査委員の先生方用が必要である。 尚、この製本費用は自腹。 業者に印刷してもらうよりも自分で印刷する方が安いので、研究室のプリンタで刷って業者に郵送する。 D論は修論に比べて枚数が多いので両面印刷にしても良い。 自分の場合は、一冊4500円かかった。

学位記授与式

学位記授与式の日程の連絡は事務から来るが、指導教官にいかないようなので一度連絡したほうが良い。 学位記は学長より一人一人手渡しでいただく。 式典なのでスーツが多い。

修了後

まずは名刺に学位を入れてもらう。 うちの会社の場合には、社長とのお食事会があるので上長に報告する。